中学校社会科 歴史公民 道徳教科書 閲覧

川崎市立中学校の教科書が来年度改訂の時期となり、各区で閲覧できます。麻生市民館ギャラリーで閲覧してきました。公民では、育鵬社の教科書の「家族の一員としての私たち」の項目で、家族の大切さを強調しています。ひとり親が増えている状況の中、個人は家族に優先すべきという風潮が強くなると、「家族の一体感が失われていく」とあり、個人的人権の尊重より、家族を優先させる考え方が全面に出ています。また、自由社では、「家族愛・愛郷心から愛国心へ」という記述で、スケート選手の掲げる日の丸が大きく写真に写され、愛国心が強調されているのは問題です。

歴史では、育鵬社が「GHQの出した草案に反対の声を上げることが出来ず、ほとんど無修正のまま採択された」とあり、帝国書院が「民間団体の案を参考にしている」東京書籍も、「GHQの草案を日本政府が修正し、議会の審議を経ている」と記述されているのと対照的です。

道徳では、評価の仕方に違いがみられました。日本教科書では、「自分を見つめ、個性を伸ばして自分を成長させようとする心」「国を愛し伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」など「中学で身につけたい22の心」としてレベル1から4まで自己評価点をつけさせます。日本文教出版では、別紙で道徳ノートがあり、教科書中に載っている35のエピソードについてそれぞれ書かせる欄があります。それとは対照的に、東京書籍では、「自分の学びをふり返ろう」Gakkenでは、「学びの記録」と自由な記述方式です。日本教科書のように、生徒をある方向に誘導しようとする意図がみえるものは、生徒が評価されたいと思ったとき、自分の意志に関わらず、評価をつけてしまうのではないか、忖度する姿勢を身に着けてしまうのではいか、と危惧されます。そもそも、道徳という教科そのものが、生徒の心を育てることができるのか、逆にある方向に誘導することもできる怖さを持っています。

教科書採択は、各自治体の教育委員会にゆだねられています。教育委員会は、教育が政治に左右された戦前の体制の反省から、政治的中立性を保てるよう1948年に設けられました。教科書選定は教育委員により採択されますが、首長が意思をもって教育委員を選べば、望む教科書を採択できる可能性があります。

新藤宗幸千葉大学名誉教授は、「教育委員会の政治的中立性は空文化している。2014年に教育行政に対する首長の関与を強める改正地方教育行政方が第2次安倍政権下で成立し、その傾向はますます強まっている」としています。「教員も親も子供も参加して学校単位で教科書を選ぶという首長の政治志向から独立した仕組み」があってもいいのではと話されています。(7月29日朝日新聞)

 

次世代を担う若者が困難な社会に立ち向かい、自分自身も社会も築いていく力をつけるには、どのような教育が必要か、市民がしっかりと考えていかねばなりません。川崎市の教科書採択に関する教育委員会の傍聴も参加しませんか。

麻生市民館ギャラリー