孫崎亨氏 講演会 報告 ーー 正しい情報を得て市民ひとりひとりが判断しよう
神奈川ネットワーク運動、関内の会議室において孫崎亨氏講演会「アジアの平和と領土問題−尖閣列島を考える−」が開かれました。孫崎亨さんはツイッターで発信し、最近はニコニコ動画にも掲載を始めたという、活動的な69歳の外務省の元官僚です。講演はまず、原発事故について、TTPについて、増税についての考えを述べることから始まりました。
原発事故については、政府の対応から考え、海外での発言や行動を知ることが大切。60年代の安保の際のデモは組織によって人が動いたが、現在、金曜日に行われてる官邸前デモは参加する人が自らの考えで行動するという新しい流れである。
TTPについては、推進者に詭弁が多いことを指摘し、農業問題ではなく、米国が日本の健康保険を狙ったものであること。米国には欧州や日本のような国民健康保険制度はなく、所得層によって医者に行けるかどうかで平均寿命が異なる事実と、今回のTTP推進団体に米国民間保険会社が中心となっていて、TTPが開始されればISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)を使い、日本の体制である国民健康保険により予想利益が得られないので訴えることにより国民健康保険を破壊して、米国の高額医療を使わざるを得ない状況を作り出すと話されました。現在、TTPに参加しているのは米国・カナダ・韓国のみで世界のG8あるいはG20、さらにBRICSの中で上記3国以外に参加している国は無い。
増税については、法人税と所得税を1985年のレベルに戻せば増税を行う必要は全くないとのこと。
今回の選挙は価値観の戦いであり、政治家あるいは政党が国民の意思を尊重するかどうかの確認であり、阿部知子(日本未来の党副代表)、山田正彦(日本未来の党副代表)、森裕子(日本未来の党副代表)など「原発事故」に対して原発卒業を提案する「日本未来の党」に掛けるのが良いのではないかという提案をされました。大手メディアによる操作が目に余るが、自分たちの目で見て情報を得、他の人に伝える必要があるとのことでした。
「尖閣列島を考える」については、1945年のポツダム宣言で日本は、本州、九州、四国、北海道と了承された島々の主権、また、戦後吉田茂首相の発言により千島列島を含む北方領土については放棄という歴史が存在することなどを示し、現在の問題は、戦略的に対応しなくてはいけないと説明されました。1979年5月31日の某新聞社説においても尖閣列島問題は中国と日本の間で理解が異なり、棚上げすることによる解決を選択したと書かれています。
今回の選挙で国民が選んだ政府が右翼化することに関して既にアメリカ右派のヘリテージ財団研究員の元ICAのクリングナーによる論文があります。自民党が選ばれた際には、原発再稼働、増税、憲法改正が行われることは明確で、憲法改正については手続き条項の変更から始める。北朝鮮のロケット(ミサイル?)発射についてはミサイル防衛とは幻想であり、実際には使用できない技術であると説明されました。結果として、「尖閣諸島問題も外交という手段を用いてウィンウィンの発想で対応するべきである。」と締められました。
講演会が選挙前で、今回の選挙は価値観の戦いであり、政府が国民の意思を尊重するかどうかが問われていて、原発事故に焦点を絞って(シングルイシュー)戦うのが良いと思うと話されました。その際、「日本未来の党」に期待する旨を述べられましたが、残念なことに期待した結果を残すことができず、自民党の圧勝という結果に終わりました。
自民党政権に交代した今、新聞、テレビなどのマスコミをうのみにするのでなく国内だけでなく、海外の市民団体や研究団体とのつながりを作り、正確な情報を得て、日本が置かれている真の状況をとらえ、自分たちで判断し、多くの人に伝えてゆくことが大切だ。」ということを学びました。 N.N.記