TPPでどうなる?私たちの食卓、くらし
7月19日午後、天笠啓介氏(ジャーナリスト、市民バイオテクノロジー情報室代表)を講師に、「とめよう原発あさお」と共催で、「TPPでどうなる私たちの食卓、くらし」と題し、勉強会を開催しました。参加者は21名でした。
天笠氏は食の安全を長年研究され、今秋にも妥結が模索されているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が本格的に始動した場合、私たちの食に関連する分野は他の分野同様規制が取り払われる結果、農業従事者のみならず私たち消費者が深刻な打撃を受けることになると警鐘を鳴らされました。
すでに行われてきたWTO世界貿易機関交渉、ETA自由貿易協定交渉とは大きく違い、TPPでは、生存権に関わる規制が取り外されるのです。
アメリカは、現在日本が行っている輸入制限、関税などを「貿易障壁」とみなし、撤廃を求めています。TPPが成立した場合、強い主導権をもつアメリカの意思が、日本国の主権よりも優先されてしまうのです。たとえば、狂牛病、クローン牛などの牛肉輸入、生物多様性を根底から破壊し、種子独占をもたらす農産物育成の、遺伝子組換食品輸入、残留農薬やポストハーベスト農薬の規制緩和、食品添加物の承認拡大などを強くアメリカは要求してきています。
TPP交渉は環太平洋に位置する諸国間の協定とされていますが、実態は多国籍企業(注)の利潤拡大に他なりません。既に農業分野の多国籍企業はアメリカはもとより多くの国と地域に遺伝子組換作物を栽培させ、農薬、種子の独占をしてきています。国内市場には既に遺伝子組換えトウモロコシ由来の添加物・食品、遺伝子組換え大豆由来の食品が巧妙なカラクリで表示を免れ、実に数多く出回っています。日本人の主食はいまや、米ではなく、トウモロコシだと言っても過言ではありません。
国家が最も大切にすべき国民の健康・安全は、TPP成立後、多国籍企業の農業・食糧支配の前に風前のともしびとなります。
「規制緩和」の美名のもと蹂躙されている食の安全を確保するにはどうしたら良いでしょうか。私たちは、天笠氏の講演から得た「食とはいのちをいただくこと」の大前提を基に以下の三点を提案したいと思います。
○ 農産物はTPP交渉と切り離す市民運動を続ける。
○ 安い食品を選ぶ行為が何をもたらすか想像してみる。
○ 可能な限り素姓のわかる食材を購入する。
注)多国籍企業:事業の拠点を一つの国に置かず、複数の国にわたって世界的に活動している営利企業の事。分野は全産業に渡っている。農業分野では、モンサント、ネスレ、ユニリバー、テスコ、ウオルマート、カーギル、デイユポン、シンジェンタ、リマグレン、KWS,など。特に気をつけたいのは、モンサント社。90年代半ばから急速に寡占化が進んでいる。天笠氏は講演の中で「日本の種苗会社が大企業に買収されたら終わり」と警告されていた。