この登戸研究所は、正式名称を第九陸軍技術研究所と言い、戦争には必ず存在する「秘密戦」(防諜・諜報・謀略・宣伝)という側面を担っていた研究所です。
資料館には、加害者としての戦争遺産などが展示され、戦うと同時に技術開発競争も熾烈さを増していった様子を伺い知ることができます。
国際法規上大きな問題にあたるものが多いため、終戦後、アメリカの進駐軍が来るまでに、証拠隠滅されてしまったものも多く、当時この研究所で働いていた方々の証言と数少ない残された資料をもとに、当時使用されていた鉄筋コンクリート製の施設を再利用し資料館としています。
戦時下、日本軍が行ってきた様々な活動について丁寧に紹介されており、風船爆弾、電波兵器、生物化学兵器、スパイ用品の開発、中国大陸で展開された経済かく乱のための偽札製造などの説明が資料とともに公開されています。この他、キャンパス内には、陸軍のマーク入りの消火栓、弾薬庫、動物慰霊碑、偽札工場だった木造建築物、神社などが点在しています。
戦後65年が経過し、薄れ行く戦時中の記録、記憶を風化させないためにも重要な施設だと感じ、見学して改めて思うことは、戦争のむなしさです。先の大戦について経験のない世代が、人口の数多くを占めるようになりました。この戦争を客観的、冷静に、見聞し、事実から目を背けず、痛みとともに、またその爪あとは、深く深く残るのだということを次の世代に語り継いでいくことが大切です。